2023年9月実施FP1級学科試験 応用編講評

講評 2023年09月13日

 2023年9月に実施されたFP1級学科試験を受験された皆様お疲れ様でした。

このページでは今回試験の講評を行います。

全体講評

全体を通して計算問題はオーソドックスな問題が多く、得点しやすかったのではないかと思います。

一方穴埋め問題は近年の傾向通り、過去問では見かけない問題が多く出題されたため、かなり難しい方で合ったかと思います。しかし、今回試験で問われた単語は基礎編や計算問題で出題実績のあるものも多く、体系的かつ網羅的に反復して学習していた受験生にとっては得点しやすく、差がつきやすかった問題だったと言えます。

配点予想

問題番号 配点 小計
 第1問
 問51  各1  6
 問52  各1  5
 問53  ①3 ②6  9
 第2問
 問54  ①~③各2 ④1  7
 問55  ①~⑤各1 ⑥2  7
 問56  各3  6
 第3問
 問57  各1  5
 問58  4  4
 問59  ①②⑤⑥各2
 ③④⑦各1
 11
 第4問
 問60  各1  6
 問61  各3  6
 問62  ①②各3 ③2  8
 第5問
 問63  4  4
 問64  ①6 ②4  10
 問65  各1  6

※公式では非公表のため、予想となります。計算過程がある問題においては部分点が付与される可能性もあります。 

各大問の講評

各問の目標得点は配点予想を元に設定しております。 

第1問(年金・社会保険)

(問51-53)における目標得点:20点中13点

 ≪問51≫

①②④は過去の穴埋めや基礎編で何度か出題されたことがあるため、比較的簡単に解答できた一方で、③⑤⑥は初めて出題された単語・論点であり、多くの受験生が失点した得点は難しかったと思います。

目標得点:6点中3点

≪問52≫

本小問では全体的に見慣れない問題が多く出題されました。

①は令和5年以降、年金額が67歳までと68歳以降で異なるため、法改正の知識を勉強できていれば得点できた問題でした。

ただ②~⑤に関しては年金のしくみについてかなり高度な知識が問われた問題だったので得点は難しかったでしょう。

目標得点:6点中1点

≪問53≫

①老齢基礎年金

老齢基礎年金の計算問題は、過去20回のうち11回も出題されるほどの頻出問題です。

過去には「免除期間」や「繰上げ支給・繰下げ支給」といった応用的な要素を含む問題が出題されたこともありますが、今回問われている内容は基本的なものでしたので、得点すべき問題だと言えます。

目標得点:3点中3点

 ②在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金

在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金の計算問題は、過去20回のうち出題された回は2019年5月と2017年1月の2回でした。出題頻度が多くないため計算でつまづいてしまった方も多いかと思います。

ただし、在職老齢年金の計算自体は基礎編や穴埋め問題でも出題されたことがあり、網羅的な過去問演習ができていた人は得点できた問題だったと言えるでしょう。FPキャンプ内では応用編の計算ステップで取り上げているため、動画や問題集を通じて計算方法を反復して演習できた受講生にとっては、他の受験生と差がつけられる論点でした。

  目標得点:6点中6点

第2問(金融資産運用)

問54-56における目標得点:20点中17

 ≪問54≫

①の固定長期適合率は2022年1月に出題されたことがある問題でした。比較的最近に出題されているため、得点しやすい問題だったと思います。

②のインタレスト・カバレッジ・レシオに関しても、過去20回の試験で12回も出題されるほどの頻出問題で必ず得点すべき問題です。

③は過去に穴埋めで出題されたことがなく、④の財務レバレッジは出題されたことがあるのですが、今回のような角度での問われ方が初めてなので解けなかった方もいらっしゃるでしょう。

ただ「財務レバレッジ」自体は頻出キーワードであり、「~~レバレッジ」と問われた際に選択肢が限られるため極端に難しい問題というわけではないと思います。

目標得点:7点中5点

≪問55≫

①のベンチマークは投資信託の説明において度々目にするキーワードですが、穴埋めでは初めて問われる問題でした。

②③④のトラッキングエラー等の説明は、今回のような問われ方は珍しいものの、基礎編でも問われやすい内容なので、単語の意味を理解していた方にとっては、比較的得点しやすい問題だと言えるでしょう。

⑤⑥について、時間荷重収益率は2023年1月試験の基礎編で問われているため得点できたと思いますが、⑥の金額荷重収益率は初めて出題されたテーマなので得点は難しかったと思います。

目標得点:7点中6点

≪問56≫

①共分散

C分野の計算問題において、相関係数や標準偏差が求める問題は何度か登場していますが、共分散を求める問題は珍しいため解けなかった人は結構いるかもしれません。

共分散を用いて相関係数を算出する問題は応用編でも基礎編でも出題実績があるので、相関係数と共分散の関連性を理解していれば解くことができます。

相関係数=共分散/Yファンドの標準偏差×Zファンドの標準偏差

共分散=相関係数×Yファンドの標準偏差×Zファンドの標準偏差

 

②標準偏差

標準偏差は過去20回のうち6回も出題されるほどの頻出問題です。標準偏差を求める計算式は長くて複雑ですが、FPキャンプにて相関係数と共分散の計算方法を解説しているため、動画で学習できていた人は解けたのではないでしょうか。

目標得点:6点中6点

第3問(タックスプランニング)

 D分野(問54-59)における目標得点:20点中17

≪問57≫

D分野も穴埋めではあまり見かけない問題が出題されたため得点は伸びにくかったと思います。減価償却に関するテーマは基礎編・応用編問わず頻出なので、構造を理解できていれば②や③などは解けたと思います。

目標得点:5点中2点

≪問58≫

事業所得の計算問題は「別表四の読み取り」と並ぶ頻出問題で、過去20回のうち5回も出題されているため得点すべき問題と言えます。

ただ今回は「取得した減価償却資産」の中に10万円未満のものがあるため、購入した期の経費として全額計上する必要があります。珍しいパターンではありますが、減価償却や経費計上に関する問題は基礎編でも頻出テーマの一つです。D分野に限った話ではありませんが、近年は基礎編で問われることが多い内容も理解していないと応用編の計算問題での失点に繋がる恐れがあるので、問題文一つ一つの要素を整理しながら解くようにしましょう。

目標得点:4点中4点

≪問59≫

こちらは事業所得の問題と同時に出題されることが多い問題です。一つでも計算ミスが発生すると総崩れする恐れがある問題ですが、各要素の頻出レベルは高く、きちんと回答できれば重要な得点源になります。ただ、雑損控除の計算は基礎編で出題されることはあるものの、応用編での出題は珍しいため、取りこぼしてしまった人が結構いるかもしれません。

目標得点:11点中11点

第4問(不動産)

E分野(問60-62)における目標得点:20点中19点 

≪問60≫

①②は頻出問題なので得点しやすかったと思いますが、③の特別用途地区は過去にキーワードとして出題されたことはあったものの、内容を理解していないと回答が難しい問題でした。

④⑤⑥は応用編ではあまり見かけない問題ですが、基礎編で借家契約は数多く出題実績はあるため、基礎編の演習で数字をしっかりと覚えられていたかどうかで差がついた問題と言えます。

目標得点:6点中5点

≪問61≫

建蔽率と容積率の問題はほぼ毎回出題される問題です。道路の反対側に川がある珍しいパターンではありますが、セットバックの目的から考えると間違えてはいけないテーマと言えます。

目標得点:6点中6点

≪問62≫

①の「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」の問題は過去に2回、②の 「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費加算の特例)」の問題は過去に3回出題されており、2016年9月試験には今回試験と全く同じ内容の問題が出題されていました。

FPキャンプ内で解説しているように、ベーシックな税金計算の問題のため、計算パターン通りに確実に得点したい問題です。

目標得点:8点中8点

第5問(相続・事業承継)

F分野(問63-65)における目標得点:20点中18点

≪問63≫

「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の問題は、テーマとしては過去20回のうち6回出題実績がある頻出問題であるものの、一つの建物を複数の用途に使用しているため計算が複雑でした。

ただ類似する問題としては2021年5月に出題された問題に近く、FPキャンプでもその過去問を題材として解説動画を公開しているため、解法や計算式をマスターしていれば解けない問題ではないでしょう。 

目標得点:4点中4点

≪問64≫

①も過去20回のうち7回も出題されたことがある頻出問題です。今回の問題は代襲相続人が被相続人の養子である、すなわち二重身分という捻りがあるため法定相続分の算出で苦戦したかもしれません。ただ代襲相続も養子も基礎編で問われるテーマであり、計算内容はオーソドックスな内容だったので極端に難しい問題ではなかったと思います。

②は①の相続税総額の問題とセットで出題されることが多い問題です。相続税の算出は前回試験でも部分的に出題されている通り、「各相続人等の相続税=相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額」で求めることができますが、当問題は未成年者控除を考慮する必要があります。

おそらく相続の計算問題をパターンで覚えてしまっている人は回答に苦戦したのではないでしょうか。相続の計算問題では今回の未成年控除や過去に出題された2割加算などを問う問題が合わせて問われることが多いので、各計算においてどの知識が求められているのかを整理しながら学習するようにしましょう。

なお令和4年の法改正で成年年齢が18歳となったため、相続税の未成年控除の適用対象者が18歳未満となり、未成年控除額の計算式が「10万円×(18-相続開始時点の年齢)」となっている点に注意が必要です。

目標得点:10点中10点

≪問65≫

①②③の「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例」は、穴埋めでの出題出題は珍しいものの、2019年9月試験の基礎編などで問われているので、基礎編の範囲と合わせて理解している人であれば解答できた問題だと思います。

④⑤⑥の「配偶者に対する相続税額の軽減」に関する問題は2018年9月に同じ範囲が出題されており、基礎編でも問われる内容なので得点しておきたい問題と言えるでしょう。

目標得点:6点中4点

試験全体の振り返りと試験の攻略に向けて

今回の応用編において、過去問をベースとした学習を重ねた場合に獲得可能な得点は84点でした。今まで問われたことのない穴埋め形式の問題を落とした場合でも、本試験で70点台が取れる学習を重ねることが理想かと思います。

冒頭でもお伝えした通り、穴埋めは近年の傾向通り難化しており、基礎編や計算問題で問われることが多い内容をミックスして出題されることも増えたため、単発の知識ではなく構造的な理解が必要だと思います。

一方で計算問題は過去に出題された基本的な計算方法をきちんとインプットして、過去問などの練習問題を何度も解いて解法パターンをマスターすれば、満点近い点数が取れる難易度でした。

基礎編が非常に難解である分、応用編で失点を減らしておくことが重要と感じさせる試験だったと言えるでしょう。